よくわかるSDGs講座シリーズ | アジア・アフリカの保健医療の現場を中心に、SDGsの全体像を習得し、企業・教育現場・市民社会などでSDGsを推進するためのヒントを探すための講座シリーズです。

第4回講座 感染症対策(結核)

講演1「SDGsの視点から見た世界の結核対策とUHC ―バングラデシュ、ミャンマーと日本の経験」
石川 信克(公益財団法人 結核予防会 代表理事 / 結核研究所 名誉所長)

【講演要旨】 本テーマを論ずるための世界戦略としては、①社会開発、②保健政策、③結核対策分野のキーワーズとして、①SDGs、②UHC、③END-TB戦略が挙げられる。私は更に、④現場における問題の発見と解決への試行錯誤を挙げたい。UHCはSDGsに包含されるが、STOP-TBはUHC、SGDsに重なる部分もあるが、疾患対策としての技術的部分は、両方からはみ出している部分、がある。これらの世界戦略は、現場での経験をもとに策定されたものであるが、現場で試行錯誤の中で、絶えず改定されていく必要がある。先ず結核という疾患の特殊性を理解する必要がある。結核は人から人に結核菌が空気感染する慢性感染症であり、普通は感染予防がしにくい。感染者の1-2割が発病し、一度感染すると一生発病のリスクがあるが発病はゆっくりで症状は非特異的、慢性に経過するため、発見が遅れやすく、その間に他の人に感染させる。長期の治療のため中途で治療脱落しやすく、社会的弱者が罹り易い。対策には社会保障・制度的対応が必要であり、対策を長期にし続ける必要がある。先進諸国の経験からも、対策の手抜きをすると流行の悪化を招く。世界的現状としては、結核は世界の死因の十位に位置し、単一の病原体による感染症としては第一位である。世界の新発生患者は年1000万人、結核死亡は120万人(WHO, 2018)に及び、世界中でまん延しており、根絶した国は未だ無い。私は、自らの経験からバングラデシュ、ミャンマー、日本の結核対策の進展と世界戦略の意義を論じる。また住民参加・当事者参加をエンパワメントの視点で述べる。国連ハイレベル会議2018では、結核への世界的な政治的コミットメントが明確にされた。SDGs・UHCの政治的強化は結核対策を強化するが、逆に、結核対策はUHCを強化し人々が人間らしく生きられる社会づくりSDGsに寄与する。

動画(講演1)の視聴