よくわかるSDGs講座シリーズ | アジア・アフリカの保健医療の現場を中心に、SDGsの全体像を習得し、企業・教育現場・市民社会などでSDGsを推進するためのヒントを探すための講座シリーズです。
パネルディスカッション2 ジェンダー(性暴力の防止、セーフシティの推進)
山口典子(堺市議会議長 大阪府堺市女性団体協議会委員長) × 上野通子(参議院議員 文教科学委員会委員長)
【上野】 私は高校の教師もしております。教師の立場から見ますと、低年齢児童への虐待等は、身体的な暴力やネグレクトが多いんですが、年齢が上がってきますと、
性的な虐待が増加しているのが現状です。しかしながら、2017年度の国のデータでは、全体の数は増加傾向、しかし、性的な虐待は前年比で82件も減っています。ところが、
2017年度の宮城県内のチャイルドラインのデータを見ますと、チャイルドラインの電話相談件数は、児童虐待の相談の52件中なんと28件、53.8%が性的虐待によるものです。
どちらのデータもデータとしては正しいんですが、ただ、暗数が有る、隠れた被害者がいる。泣き寝入りをしている子どもたちがいるという現状がある。そして、その加害者の多くは実父。
加害者の多くが実父ということが、これが大きな問題でもある。高校生に性暴力からの性的虐待で望まない妊娠をして退学した生徒や、PTSDが続き不登校となった生徒もいる。なぜなら、
子ども本人が父親から、性的虐待を受けていますということは言えないから。ここを何とかしていかなければ。自民党の青少年健全育成推進調査会事務局長としてH29まで5年間に渡り、
調査会の国会議員の皆さんと共に、青少年、特に少女を性犯罪から守るための環境整備に取り組み、実際に実態調査にも行ってきました。そして、たとえば一時ブームとなったJKとか、
JCとかJS等のビジネスの現状を把握すると共に、少女たちを性犯罪から守り、悪質なJKビジネスを取り締まるために、国に対して要望を出させて頂きました。そして、
上川先生が法務大臣のときに、いわゆるアダルトビデオ出演の強要問題や、JKビジネス問題等に関する今後の緊急な対策を各省庁横断でやっていくということを、
平成29年3月14日にまとめていただきました。
これによってですね、ものすごい効果がありました。実は、その数年前から、悪質なJKビジネスで悩まされている東京都や神奈川県や埼玉県では、条例を改正して規制をし、
又、罰則も付けるなど、子どもを守るためにJKビジネス取り締まりの強化策をとっていただきました。そして、国は一歩遅れたわけですが、緊急対策をして頂き、その動きが加速化したわけです。
又、女性に対する暴力を無くす運動を発信しようと全国47都道府県に、性犯罪暴力被害支援センターが設置されました。しかしながら、どの県も予算不足であり、活発な活動ができない。
そこで、今国会において、性犯罪・性暴力被害者支援の交付金を予算化することになりました。やっと一歩踏み出した形になったわけです。
一方、アメリカでは、毎年、国務省人身取引の監視対策部が「全世界の人身取引等の白書」をまとめて公表しています。2017年までは、
日本政府は人身取引撲滅のための最低基準を十分に満たしていないと言われてきました。そして、JKビジネスのようなものは、あれはおかしいんじゃないかと、
日本人は何であんな子ども達を性的に搾取するようなところをいまだにオープンにしているんだと白書に記録され続けてきましたが、2018年度の白書を確認しますと、
人身取引撲滅のための最低基準を十分に日本は満たしている。そして努力している。いま動きつつある。未成年を引き合わせるデート業であるJKビジネスや、
ポルノビデオ出演強要における性的搾取の目的の児童の人身取引対策を、新たに関係府省庁対策会議を設置して行おうとしている。前年までの比較から、
すごい前進であるというようなことが白書に出たわけでございます。でも、未だに、まるでイタチごっこのように、JKビジネス風ビジネスがまた出始めております。これからも、
私達はしっかりと青少年を、性犯罪や性暴力から守り続けなくてはダメです。
私は、海外における児童虐待と性犯罪の調査も行っていますが、先日伺ったフィリピンセブ島の児童養護施設では、中高生のみの施設でしたが、90%以上の子どもが、
男子は薬物の被害、そして、女子は性暴力・性犯罪の被害者でした。PTSDにより家庭に戻れず、学校にも行けない子ども達に、今一番必要なのは、安心できる居場所と大人の愛情、
愛に飢えた子どもへの支援の難しさは、どの国でも共通すると実感しました。全ての子どもの笑顔につながる取り組みを、出来ることからやっていきましょう。