よくわかるSDGs講座シリーズ | アジア・アフリカの保健医療の現場を中心に、SDGsの全体像を習得し、企業・教育現場・市民社会などでSDGsを推進するためのヒントを探すための講座シリーズです。

第4回講座 企業と投資

講演1「年金資金の運用、企業のガバナンス、ファイナンスとSDGs」
水口 剛(高崎経済大学経済学部教授)


【講演要旨】 地球温暖化は典型的な「市場の失敗」です。市場の失敗を市場のメカニズムによって解決していこうという考え方がESG投資(環境(E)、社会(S)、ガバナンス(G)に配慮した投資のこと)です。 これらを考慮した投資が、2006年の「責任投資原則」によって世界に広がり始めました。国連事務総長であったアナン事務総長は、原則をつくっただけではなく、賛同するならば署名をと世界の機関投資家に働きかけました。 1,900件以上の機関投資家の資金を集めて、80兆ドル以上、日本の国家予算の80倍ぐらいの資金が集まっています。 日本では2015年の9月に年金積立管理運用独立行政法人(GPIF)が責任投資原則に署名をしたことで、急に注目を集めました。国民年金と厚生年金の積立金をまとめて運用している、世界最大の機関投資家です。
  その結果、日本でもESG投資が確実に増え始めています。年金の運用に際しては、将来どんな社会が生まれるのかまで考える必要があるのではないでしょうか。 これがESG投資ということの考え方であります。運用を受託している運用機関の側は具体的なESG投資をします。ESG投資というのは、単に良い企業を選ぶという単純なものではなくて、株主としての要請をします。 良くない企業を除外するなど、さまざまな方法を組み合わせて行っているということです。 気候変動だけがESG問題ではありません。最近ESG投資の中で、工場的畜産における抗生物質の使用による、薬剤耐性菌の出現が大きな問題になっています。 これは農家だけの問題ではなく、農家から物を買っている企業の問題でもあります。気候変動問題だけではなく、こうした問題がユニバーサル・オーナーのビジネスリスクとしてクローズアップされています。
  SDGsを根本から問題解決していくためには、企業、NGO、機関投資家が、議論を戦わせ、ポジティブなインパクトを生み出していくメカニズムが求められています。

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講演2「最貧国での水供給改善に向けた取り組み~南アジアを事例として~」
小松 悟(長崎大学多文化社会学部准教授)


【講演要旨】 「No One left Behind」「誰一人取り残されない開発」一番取り残されそうな人たちは一体どこにいるのか。地理的、民族、さまざまな要因で非常に恵まれない、非常にアクセスしづらい人たちがいると考えます。 以前「MDGs」ミレニアム開発目標に、ゴール7「環境の持続可能性確保」というものがありました。 期間が終わったところ、飲料用水源改善され、この目標は既に概ね達成されております。しかし一部地域では目標未達成、貧困層の農村と都市との格差課題があります。 SDGsは2030年に向けて「全ての人に不自由のない公平な水アクセスをまず達成しよう」という目標です。 水へのアクセス、時間、より高いレベルの水供給を達成することが非常に重要になってきます。水くみ時間の負担を軽減すると女性が学校に在籍しやすくなります。 健康面で下痢が減る、5歳未満死亡率が低下するといった効果が得られ、開発目標の達成が可能になっています。
   ネパール政府は近年、太陽光エネルギーを使った水くみ設備を普及させていますが、完全な、Safely managedというレベルには達しないという課題もあります。 また持続可能な水供給は重要なものですが、水供給だけでは民間ビジネスに乗りにくいという課題があります。ODAプラス民間の長期的な戦略が求められていくと考えます。 衛生だけではなくて、ビジネス化産業振興も非常に重要です。「DOHaD」は、栄養状態、健康状態が悪い女性が妊娠し子どもを産んだ場合、その影響は母親だけじゃなく子どもにも影響する、世代間で影響をするといった概念です。  世代間の影響というものを十分に考えた上で、「No One left Behind」を考えたほうが望ましいというふうに考えます。

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