ユニバーサルヘルスカバレッジ(UHC)
私自身が国際保健の分野に関心を持つきっかけになったのは、自分の父親がハーバード大学に、武見プログラムinインターナショナルヘルスという国際保健のプログラムを亡くなる直前につくりました。 そして作ったらとたんに死んじゃったもんですから、その後武見プログラムを持続させる為に日本側で資金を集めたり、あるいは世界から識者を呼んでセミナーを開いたりしたことがこの分野に対する私の関心のはじまりでした。 その後テレビ朝日のキャスターや助教授をやっていた頃に、自民党から参議院比例代表選挙区の候補者になり、東海大学で人間の安全保障というテーマで研究所の運営をしていたものですから、それをすぐに活用する機会に恵まれました。 当時、小渕恵三さんという私と同じ名前の人が総理大臣で、この人間の安全保障という考え方も総理にご進講申し上げると「武見君それいいじゃない使おう使おう」ということになりました。 それが実は日本が外交の一つの基準として人間の安全保障という考えを取り入れるきっかけになりました。
それをまた理論的に整理していく上で、2000年に開かれた国連ミレニアムサミットが活用されました。それまでUNDPなどで人間の安全保障という言葉を使っておりましたけど、概念的に極めて雑駁なものでありました。 そこで概念整理をするため、当時のコフィ・アナン事務総長と協力をして、そこにアジアで初めて経済ノーベル学賞を貰われたアマルティア・センさんと緒方貞子さんに共同委員長になっていただいて人間の安全保障委員会をつくりました。 そこでこの概念整備をすることになり、私は事務局にてお手伝いをさせていただく機会を得られました。
その時にアマルティア・センさんから、人間の安全保障という考え方について以下のようなことを教わりました。それは、人間はただひたすらに生きていればいいというのではない、いかに人生を有意義に過ごすかが重要であり、そのサポートする考え方を持たなければいけないということでした。 それは人生の選択肢を増やすことであり、人間がより有益な人生を営むときに、必要とする選択肢をできるだけ多く確保できるチャンスを作り出すことが、政策目標として設定されるべきである。 実は人間の健康という問題は、それだけでは人間の有意義な人生を営むときの選択肢としては不十分であるけれど、しかしその健康というものを損なってしまうと、その他のあらゆる人間のより有意義な人生を営むための選択肢というものが損なわれてしまう。 そういう意味で健康という問題は、人間の安全保障にとって核となる分野であることを教わりました。 なるほどこれはいい考えだと思って、その後ずーっとこの人間の安全保障という観点から保健という問題に関わることになりました。
その上で、この今日のテーマのUHCとSGDsの話になってくるわけです。2000年のミレニアムサミットにて人間の安全保障基金を設置したり、人間の安全保障委員会を創設することを提案しました。 実はその時私たちの頭の中には、MDGs、ミレニアム開発目標ということは全く頭の中にはありませんでした。 その当時コフィ・アナン国連事務総長がMDGsというのを創設したいので委員会を作ってですね、それでMDGsを採択して、なんていうこともなく総会で採択されてMDGsというのが生まれたわけです。 出来てみたらですね、このMDGsというものが一人歩きを初めて、やはり保健分野で国際的に資金調達をする時の一つの重要な指標になってしまいました。 それによってMDGsを通じて2000年から2015年の15年間というのは、国際保健の分野で資金調達をするというのが非常にしやすかったという経緯がありました。
ところがです、2015年にMDGsにかかわる2030年までの新しい目標を設定しようというSDGsの議論になった途端、あらゆる国際的な活動をする人たちが、自分たちの活動に新たに資金を調達するときにSDGsの中に自分たちの目標を入れ込むことがものすごく重要になってきたということに気がつきました。 それによってですね、事務総長の元に沢山のいろんな委員会ができて、大規模な政府間の会議であったり、民間を入れた会議であったり、そこで大騒ぎになりました。 そこでいろんな人がいろんな意見を言って調整するのが実は大変だったんですけれども、その結果として、先ほど片峰先生が仰ったように17の目標で、169のターゲットになっちゃったんです。 一体どうやってこんな沢山の目標やターゲットを2030年までに達成したらいいんだろうかと、正直思います。 しかしそういう時に、こういう多くの目的を、同時に達成することが可能な、多分野横断型の政策概念というものがこうした目標を達成する時には非常に重要になってくる、という考え方がみんなの中で共有されていきました。 保健分野においては、そうした多分野横断型の政策概念として我々が新たに取り上げるべきものは何かという議論になった時に、みんな迷わず「コレだ」と言ったのがこのUHCだったんです。 このUHCというのは、2005年のWHO総会でその定義が採択されていました。それはすべての人々が負担可能なコストで予防を含む適切な医療にアクセスすることが可能であるという定義でした。 我が国の場合、1961年の国民皆保険制度が、達成された時が、おおよそこの時期になると思います。
世界の保健の潮流・日本の貢献
そこで、この国際保健の大きな流れを若干説明をさせて頂きます。 ご案内のとおり、今年は1978年、カザフスタンのアルマアタでプライマリヘルスケアが定義をされて、WHOとUNICEFなどの共催で行われた会議でアルマアタ宣言が出されてちょうど40周年です。 今年の10月には、記念すべき40周年の会合がアルマアタ(現在のアルマティー)にて開かれることになっています。このプライマリーヘルスケアは、言うなれば保健のシステムを設計するときの一つの基礎的なガイドラインとなる考え方です。 しかしながら、実際に国際社会の中では、こうした保健に関わる基本的なアプローチは保健のシステムという観点だけではなく、むしろポリオの根絶とか結核感染予防とか、特定のこうした疾患に関わるアプローチというものが、実は主流化をしてしまいました。 それによってAIDS、結核、マラリア、そしてポリオ、様々なこうした疾患別の取り組みが国際社会の中に出来上がります。 しかしながら、疾患別のアプローチだけではやはり不十分で、実際必要とされる人々に、必要な保健医療のサービスを提供することができない、やはりプライマリヘルスケアから始まった保健のシステム強化という考え方が必要だという考え方が、この2000年のミレニアムサミットが終わった後ぐらいから確実に浮上します。 そしてジョイント・ラーニング・イニシアティブという、民間のネットワークがこの保健のシステム強化ということを強く主張をし始め、そしてそれが次第に主流になっていくということになります。
ちょうど2008年のG8の洞爺湖サミットのホスト国に我が国がなったころというのはちょうどその時期で、しかも運の悪いことにその直前の2007年の参議院選挙で私落選を致しまして、暇になりました。 そこでハーバード大学のマイケル・ライシュという、武見プログラムの教授から「あんた暇になったんだろうからハーバードに来て勉強でもしない」と言われて、それでハーバード大学に行って医療制度の比較分析をやろうと思って勉強を始めました。 その時に共同研究やろうと言ってきたのがジム・ヨン・キム教授でありまして、ジム・キムがその後ダートマス大学の学長になって、「あいつ随分偉くなったな」と思っていたら、世界銀行の総裁にまでなってしまいました。 そういう経緯もあってですね、ハーバード大学という私の一つの拠点ができました。 同時にその総理であった福田康夫先生から、「お前暇になっただろうから、このG8サミットでアジェンダを設定するタスクフォースの責任者になってもらいたい」と言われました。 それで「保健分野を中心にしてやってよろしいですか」と聞いたら、「それは人間の安全保障と密接な関わりがあるからぜひそれでやってみたらどうか」と言われました。 そうして省庁横断型のタスクフォースの主査となって、「保健のシステム評価というのが、おそらくは間違いなくこれから国際貢献で政策を策定する時のキーコンセプトになるだろう、ぜひそれを日本がホスト国として提唱しましょう」ということを言いました。 そして保健のシステム強化という観点で実際、このG8のなかで日本がその重要性を提唱するという役割を担うことができました。 この保健のシステム強化ということが、グローバルヘルスで主流になってくる、その大きな役割を日本が果たすことができました。
保健のシステム強化ということを進めているときに、その政策目標は何かということが次のテーマになりました。 そのときに、「あそうだ、そういえば2005年にWHO総会で採択されていた、あのUHCという政策概念というのは、正に保健のシステム強化の政策目標になるだろう」という考え方になっていきます。 そしてその考え方というのが、2008年以降確実に広がっていきます。 そして、2015年にSDGsが採択される前の段階では、こうした保健のシステム強化の目標としてのUHCというものが、SDGsの中できちんと目標として設定されるべきだという議論が確実に広がりました。 ただそのときに、いろいろチャレンジングな議論がありました。 それはUHCというのはツールであって、それを通じて人々の健康をしっかりと守り育てることがその結果としての目標であって、UHCそのものが目標ではないと言う人々が居ました。 従ってそういった人たちとも随分と議論を戦わせましたが、その結果やはり、こうした多くの目標を達成するための共通の多分野横断型の政策概念としてこれを活用しようという議論が確実に広がりました。
これによって、人類社会にとっての直接の目標ではないけれども、一つの政策的な目標として掲げることで、結果としていくつもの分野の目標を同時に達成することができる、従ってこれをSDGsの3の中のターゲットの一つにしようというコンセンサスが最終的に出来上がりました。 それで2015年にSDGsが策定された、こういう訳であります。 その上で、この日本はその後も保健分野でそのUHCをどう達成したらよいかという議論に積極的に関わることになります。 そこで改めて2016年のG7伊勢志摩サミット、あるいはUHCフォーラムin 2017といったものにも繋がっていくわけです。
国際保健とUHC
その過程で日本はいったいどういうことを具体的に行ってきたかと言いますと、この2000年の九州沖縄サミットの時は、日本は橋本龍太郎さんという首相経験者が感染症イニシアティブをやろうということをさかんに仰っていました。 それで30億ドルの資金をコミットして、特に感染症に関わる新しいイニシアティブを日本がこの98年九州沖縄サミットで提言をします。 その提案がきっかけになりその2年後に、グローバルファンドが創設されることになります。 グローバルファンドでAIDS、結核、マラリアという感染症を対象として新たな資金を国際社会で作る引き金になったのは、この九州沖縄サミットでの日本の感染症イニシアティブでした。 その上で2008年のG8洞爺湖サミットで保健のシステム強化が大きな目的となり、その主流化に大きく役割を果たすことになっていくわけです。 その中でヘルスシステムを考えるときに、WHOは6つのbuilding blocksを定義づけていたわけです。
その中心はファイナンス、それからヘルスの情報、それから人材、といったこの3つがその主流であったわけです。 その他にもサービス提供、それから医薬品、そしてさらにガバナンス&リーダーシップというものがあるわけです。 改めてその全体を議論したときに、当初保健のシステムという観点で議論をし始めたときに、やはりサミットなんかで取り上げる時に、ガバナンスやリーダーシップっていうのはいろんなしがらみも関わってくるからこれはちょっと避けようということになりました。 むしろファイナンスと情報と人材をその主要なbuilding blocksとして、保健システム強化の政策ターゲットとしようという考え方で減題の決定をしました。 しかしその後、やはりガバナンスやリーダーシップというものがなければ、こうした個々の国のレベルでUHCシステム強化を図ることは難しいという認識になりました。
それで改めてハーバードのスクールオブパブリックヘルスの武見プログラムでですね、ちょうど30周年の大きなセミナーをボストンで開くという機会に恵まれました。この2013年に、ガバナンスとリーダーシップをテーマにセミナーをやりました。 その結果がGoverning Health Systemsという本として、マイケル・ライシュと私とで編集して発表しています。 この考え方が実はその後の伊勢志摩サミットにも確実に影響しています。同時にこの時期、日本のUHCの経験というものをランセット・ジャパンシリーズとして発表する機会に恵れました。 そしてまた世界銀行とこの保健の健康システム強化に関わることを研究をする機会に恵まれました。 それぞれ日本は国際社会に関して、保健のシステム強化、そしてその目的としてのUHCというものを達成するための理論的なリーダーとしての役割を担う基盤がこうやって徐々に出来上がります。
そして2016年、伊勢志摩サミットは、UHが2015年にSDGsに採択された直後に行われる最初のG7のサミットでした。 ですから、是非このSDGsを活用しよう、そしてそのSDGsを活用する中でUHCをその目的とする場合に、どういう戦略的な枠組みでこれを達成すればより効果的に達成できるかと考えました。 その時にちょうどエボラ出血熱というのが、西アフリカの三か国で大流行をしてしまい、大変な国際的な課題になっていました。 これを受けて、この危険な感染症に関わる危機管理のシステム構築というものとUHCの達成というのを2本柱として立てていきました。 そして特に危機管理に向けた準備や予防というのはUHCを達成するためのプロセスの一つになるという観点で両者をつなぎあわせました。 それによって、この両者を達成するための戦略的枠組みを日本はホスト国として提言をしたい、というのがこの伊勢志摩サミットであります。
英医学誌「ランセット」への寄稿
その考え方について、私自身はそれを取りまとめて、外務省が協力して出している「外交」という雑誌にその考え方を提案させていただきました。 この考え方というものについては、安倍総理も大変に深く理解をしてくださいまして、総理にランセット誌に実際にこのUHCを達成する上での日本の経験というものについて、その論文を載せて頂きました。 さらにこのUHCというものを達成する上において何が必要か、その一番の必要性というのは実は資金であります。 しかもUHCというものを達成しようとするときに、ただ達成すればいいんじゃなく、それを持続可能な形で達成しなければなりません。 しかもそれをファイナンスという観点で考えた時に、他国から資金協力を得ながら、自分たちの国のUHCを達成し維持しようとしても、常にそれは他力本願で、他国に依存し国際機関に依存しながらの資金調達になりますから、持続可能性が低くなります。 したがって出来うる限り自国の財源を使って、このUHCを達成するという考え方をそれぞれ国に持ってもらわなければならない。
そのためには何が必要かといえば、財務大臣がそうした認識を持って、この保健分野に関わる自らの役割を認識するようにさせなければならないと考えました。 それをジム・キムと相談しましたら「それはいい考えだ、いっしょにやろう」となりました。 しかもそのありがたいことに、今の麻生太郎は財務大臣で、私は麻生派でありますから、非常に話がしやすくて「こういう良いことをやったら日本のためになります」といったら協力をしてくれました。 それでこのTICAD Ⅵの時にこのファイナンスに関わるUHCフォーラムを日本で開こうという提案をジム・キム総裁にしてもらって、そして日本の財務大臣がそれを引き受ける形で開かれたのが実は昨年の12月に開かれたUHCフォーラムin 2017です。 これは皆さん、厚生省とか外務省のイニシアティブじゃないんですよ、財務省イニシアティブで開かれた。 そのことは当初からそれが目的で、いかにこのグローバルなレベルでの各国の財務大臣と保健大臣が連携して、こうしたUHC達成に向けて協力するよう仕向けるか、という動機の中で実は意図的にやったわけです。
これによってですね、先ほど根本さんからもご紹介があった通り、国連の事務総長、これを機会に初来日をしてくださり、しかもユニセフのトニー・レーク事務局長も来てくれました。 そしてジム・キム世銀総裁はもちろんのこと、WHOのテドロスという新事務局長等、国際的な組織機関の保健医療に関わるリーダーのほとんどが集まりました。 これによってですね、日本のUHCを達成していく上での主体的な役割というものについての国際的な理解が相当進みました。 これを受けて、ジム・キム総裁と今年1月ワシントンDCで相談をいたしまして、「この流れをしっかりとさらに延長したことをやろうじゃないか」ということになりました。 「世銀が毎年2回開催する大きな大会、その世銀の大会の中の公式行事として、UHC財務大臣会合というのをやってみようじゃないか」と言ったところ彼は、「ぜひやろう」となりました。 WHOと世銀と日本政府が協賛してやるということになって、実は4月の20日にですね、このワシントンDCでこの3者共催のUHC会合が開催されました。 そこで改めて2つのアプローチで、財務大臣が保健分野により関心をもつような仕組みをつくりました。
その一つが、これはジム・キム総裁が指導して用意したものでありますけど、investment in human capital(人への投資)です。 人材の育成というものに資金を配分したら、それがどれだけ効果的に経済成長に影響を及ぼすか、こういう多分野横断型でその因果関係を捉えてそれを測定するためのIndexを作る。 それによって保健分野も含めこうした人材の育成に関わる財源配分というものが、経済成長にも確実にプラスの効果を持つ、この分野に関する財源配分は、経済成長にとって投資となるという考え方を測定するためのしくみを作ることになりました。 そのことが正式にこの、UHC会合の時に発表されることになります。
そしてもう一つの動機付けというのがですね、世銀の中にグローバル・ファイナンス・ファシリティ(GFF)というUHCのための資金調達のための基金があります。 それと連携させる形で世銀の中で、特に低所得国に対するインフラ整備の資金協力をするInternational Development Associations、IDAの資金を従来のインフラ整備だけではなくて、危機管理を含めUHCにも使えるようにしました。 そしてグローバル・ファイナンシング・ファシリティについての資金の調達ができる国に対して、このIDAの資金も同時に大きく活用することができるという仕組みをつくりました。 この結果として、IDAにその申請をする時の窓口は各国の財務大臣になります。 結果としてその財務大臣と保健大臣が、連携をしてこの新しいしくみにアプライするという形にいたします。 これによって、必然的に財務大臣と保健大臣は協力をするという形になるわけでありまして、この2つの観点からこのUHC会合で財務大臣にも、UHCに関する関心を持つ良い動機付けのしくみを作っていったわけです。
健康へのSDGsの目標設定
後申し上げておきたいことは、やっぱりSDGsの中での3のですね、Ensure healthy lives and promote well-being for all at all agesです。 目標の設定自体がMDGsのような各疾患であったり、母子保健であったり、そういう目的にならないで、テーマ全体がHealth, Healthy livesとwell-beingなんですね。 これは健康という概念を狭く身体的あるいはメンタルな健康というだけに限らないで、より幅広く深くこの健康という問題をとらえています。 単に長生きすりゃいいんじゃない、それは改めてより健康に長生きをしかつまたその中でwell-beingという、より良き存在として生きていくことができるようなことを幅広く政策の目標としようという考え方になってきます。 これはまさに人間の安全保障の考え方そのものでありまして、人間の安全保障という言葉は使っていません。 このSDGsの3というのは、そうした考え方というものを確実に反映している、ということをぜひご説明しておきたいと思います。
G7伊勢志摩サミットにおける政治的政策的コミットメント
これは伊勢志摩サミットの時の実際の枠組みでありまして、その特徴のひとつはグローバルヘルスのアーキテクチャの強化です。 G8の洞爺湖サミットで保健システム強化を提案した後、8年後のG7の伊勢志摩サミットの時には、8年前には抜けていたガバナンスとリーダーシップのところを復活をさせて、グローバルヘルスのアーキテクチャというのを一つの大きなテーマにして提案することに成功しました。 そしてこの危機管理のためのシステム整備というのを、UHCの達成の一部として連携強化をしました。 そしてその時特に今回、UKイギリスのほうからの強い要望もありまして、多剤耐性菌に関わる対応がそのなかにきちんと組み込むこと、この3本柱が大きな枠組みで日本はホスト国として役割を果たしました。
G7伊勢志摩サミット開催1週間前に公表された資金協力コミットメント
申し上げておきたいのは、こうしたルールメーカーとしての役割を果たすときに何が大事か、こういうこの精緻なきちんとした理論的な整理をする能力が大事ということだけありません。 国際社会でこういう分野でしっかり影響力を確保しようとしますと、どれだけ資金を調達をし提供することができるかということがですね、その大きな影響力を決定する要因です。 ですからそのG8の洞爺湖サミットの一週間前には、時前に官邸の方が主導して、こういう保健分野に関するそれぞれ資金的なコミットメントを11億ドルと実際に発表して、そしてその資金的な裏付けのある形でホスト国としての政策提言をするという戦略を取ります。 同じ戦略を実は先だってのUHCフォーラムin2017でも取りまして、このフォーラムを開催する2週間前に財務大臣にランセットにUHC達成における財務大臣の役割につき論文を掲載して頂き、 1週間前にその財政的なコミットメントを発表したという同じ戦略的な組み立てをしております。
UHCフォーラム2017
ここにありますようにそのUHCフォーラムというのをやってみたら、安倍総理の横にグテーレス国連事務総長が居て、ここにテドロスWHO事務局長が居て、ここにジム・キム世銀総裁が居て、 ここにユニセフのトニー・レーク事務局長が居て、ここにGAVIのバークレー事務局長が居て、みんなこうやっていらっしゃるわけであります。 不肖私もここにちょこりと立ってですね、自己宣伝をさせていただきましたけれども。 こうした快挙を実行していくためには資金的なアポイントメントというのは必須でありまして、ここにありますように合計で29億ドル、ちょっと水ぶくれした数字ではございますけれど日本はコミットしたわけであります。
2018年 UHCに関する財務大臣会合
ここにありますように、こうしたグローバルな政策を提言する時にはグローバルなレベルとカントリーのレベルというのを、常に両方考えていかなければなりません。 そしてこのグローバルなレベルでは、今日本は世銀とWHOの連携を強化させる役割を担う、そしてカントリーのレベルでは、財務大臣と保健大臣の連携効果というものを促進します。 そしてグローバルなレベルからナショナルなレベルに、こうしたUHCを達成するための政策的な働きかけをします。 その動機付けになるようなしくみも、ここにあるようにこのInvestiment in human capitals(人への投資)と、それからこのGFFとIDAの連携のしくみといったようなものを我が国は作ることに努力をしています。
今後日本がホストするグローバルヘルス関連会合
今日は東京にて第3回目の患者の安全性の国際的な会議が開かれています。 来年にはG20のホスト国、TICAD7のホスト国、それからUHCのハイレベル会合が、先ほど根本さんのご紹介がありましたけれども、開催されます。 さらに2020年はオリンピックだけではございませんで、栄養サミットや第2回目のUHCフォーラム等開催されることになっております。 実際にこうした会議を組織しつつ、それぞれの会議を個別に終わらせてしまうのでなく、それぞれの会議の成果を連携させて戦略的にシナジー効果を作りながらこうした政策展開を行っています。 こうしてUHC達成に向けての主流というものをしっかりと作っていこうというのが、今の我が国の立場でございます。 その背景にはSDGsというものがあるわけでございまして、そのSDGsの中のUHCを通じて我が国は今これだけの具体的な貢献をすることができる国になってきた、ということをご報告したいと思います。