私たちは、自分たちの目の前で起きていることしかわからないことが多い。理解できないこともあるし、理
解しようとしない人たちもいる。そういう世界で生きている。悲しくても仕方がない。でも、理解したいと思う。結局、わからないだろうと言われようと、わかりたい、知りたいと思う。世界は広く、また狭い。違いがあって、ばらばらでも、それをそれとしてどうやっていけばうまくいくのか。その場所に合った答えを見つけるために何を理解すればいいのか。全ては自分自身の想像力にかかっていると思う。そのためには、自分が色々
な場所に出ていくしかない。その大きな一歩がこの研究科だった。そこには同じように悩み、迷っている人が沢山いて、先生を含めて、暗中模索の中で力強く生きていた。迷うからこそ人生は楽しいのではないかと思えた。ぶつぶつ言いながら、振り切れている人たちがいるのだとわかって、とても楽になった。次の一手は動かないと見えない。
私は現在NGOに所属し、海外プロジェクトを国内からサポートしたり、新規事業形成に関わる仕事をしています。長崎を離れれば離れるほど、MPHでの学びがいかに貴重であったかを感じる毎日です。例えば、大学時代には学ぶべき分野の多さに戸惑いを感じたこともありましたが、実際に自分が事業形成やその運営管理に携わると、大学で学んだプロジェクトマネージメント、援助論、保健政策、文化人学、統計学と言った様々な分野が絡み合い考え方の基礎になっていることを実感します。その基礎があるからこそ、現在の仕事に活かせるのだと思います。また、諸団体が参加する外での会議に出席すると、教授陣を始め先輩方の長崎ネットワークの強さを改めて感じることがあり、非常に恵まれた環境で学べたことに感謝しています。今まではアジアを主なフィールドとしていましたが、現在はアフリカ事業が中心となり、職場の皆さんに支えられながら新しい分野を学んでいます。
青年海外協力隊での活動をきっかけに、人々が健康になることを阻害する要因には、貧困問題だけではなく、宗教や文化、習慣など様々なことが複雑に絡み合っていることを知りました。どのような方法をとれば、貧しい人も豊かな人もみんなが安心して健康に過ごせるのだろう、そのことをもっと深く学びたいと思い、入学しました。
一年次は、医療系の自分にはまったく縁のない経済学や人類学など新しい学びがあり、課題は大変でしたが、調べれば調べるだけに貪欲に知見を深めることが出来、先生方もその貪欲さに付き合って下さり贅沢な時間を過ごしました。二年次には、インターンとしてJICAのプロジェクトで実務経験をした後、母乳育児に関する調査・研究を行いました。国際協力の現場の実際をインターンという立場で業務としての責任を含めて学べた大変貴重な機会であったとともに、現地の人々からも人間が生き抜く術や強さを学んだ8ヶ月でした。
現在はHANDSという法人で、UNICEFと共に3月11日に起こった東日本大震災の復興支援プロジェクトスタッフとして岩手県沿岸部の乳幼児の保健・栄養支援にかかわっています。本研究科の先生方、事務職員の方々に支えていただき、たくましく個性豊かな仲間と過ごした長崎での日々を胸に、これからも困難な状況に打ち勝つ精神力と応用力を磨き、日々成長していけるように頑張りたいと思います。